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Poesy of the Week_♡ 別れ /晩夏より

  別れ青い眼をした白い猫だったあのとき ふり向いて わらわなければよかったあんなに 足早に 帰ろうとしたのに外には 夏が 降りそそいで       空気は ひばの匂ひに染まりあなたは 夏にぬれそぼった季節とわらひと いつまでも 揺れてゐたふり向いたのは 猫だったろうか あなただったろうか別れが近づいてゐた 夜だった                                <吉原幸子  ...

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Poesy of the Week_♡見知らぬ子へ

 何だかとてもおこりながらすたすた歩いて行くおかあさんのうしろから中学に入ったばかりかな? 女の子が重い鞄をぶらさげて泣きながらついて行くときどき振り向いていいかげんにしなさいとおかあさんは叱るけれど悲しみは泣いても泣いても減らないからやっぱり泣きながらついて行くあんなにおおきな悲しみがあんなにちいさな女の子にあってもよいものだろうかととあるビルからふらりと出て来た男のひとがかんがえているその...

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Poesy of the Week_♡ 静物

 静物夜の器の硬い面の内であざやかさを増してくる秋のくだものりんごや梨やぶどうの類それぞれはかさなったままの姿勢で眠りへひとつの諧調へ大いなる音楽へと沿うてゆくめいめいの最も深いところへ至り核はおもむろによこたわるそのまわりをめぐる豊かな腐爛の時間いま死者の歯のまえで石のように発しないそれらのくだものの類はいよいよ重みを加える深い器のなかでこの夜の仮象の裡でときに大きくかたむく<吉岡実  静物...

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Poesy of the Week_♡ 太陽

カルモヂインの田舎は大理石の産地で其處で私は夏を過ごしたことがあった。ひばりもゐないし、蛇もでない。ただ青いスモゝの藪から太陽がでてまたスモゝの藪へ沈む。少年は小川でドルフィンを捉えて笑った。                        <太陽 西脇順三郎>    まるで、ヨーロッパの避暑地で創りましたというようなこの詩は、西脇順三郎のAmbarivalia「アムヴァルワリア」のなかの一編です。大正時...

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Poesy of the Week_♡幾千年

                                       *** by 斎藤博美先生流砂に埋もれ幾千年を眠っていてふいに寝姿あらわにされた楼蘭の少女花ひらかぬまにまなこ閉じ金髪 小さなフェルト帽ラシャと革とのしゃれた服しなやかな足には靴を穿きミイラになってまで恥じらいの可憐さを残し身じろぐあなたから立ちのぼるつぶやきああ まだ こんななのたくさんの風たくさんの星座をめぐりたく...