Poesy of the Week♡_春から夏へ「荒地 T.S.エリオット」

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シュタルン・ベルガー・ゼー湖の向こうから
夏が夕立をつれて急に襲ってきた。
僕たちは回廊で雨宿りをして
日が出てから公園に行ってコーヒーを
飲んで一時間ほど話した。
「あたしはロシア人ではありません。
 リトゥアニア出身のりっぱなドイツ人です
 子供の時、いとこになる大公の家に
 滞在っていた頃大公はあたしを橇に
 のせて遊びにでかけたが怖かった。
 マリーア、マリーア、しっかりつかまって
 と彼は云った。そして滑っておりた。
 あの山の中にいるとのんびりした気分になれます。 
 夜は大がい本を読み冬になると南へ行きます。」
 
抜粋 
 <荒地 T.S.エリオット  The Waste Land T.S. Eliot 西脇順三郎訳>

Summer surprised us, coming over the Starnbergersee 
With a shower of rain; we stopped in the colonnade, 
And went on in sunlight, into the Hofgarten, 
And drank coffee, and talked for an hour. 
Bin gar keine Russin, stamm’ aus Litauen, echt deutsch. 
And when we were children, staying at the arch-duke’s, 
My cousin’s, he took me out on a sled, 
And I was frightened. He said, Marie, 
Marie, hold on tight. And down we went. 
In the mountains, there you feel free. 
I read, much of the night, and go south in the winter. 
«abr»

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♡暑いですね。
こんなに暑いと水のあるところへ避暑にでも行きたくなります。
この詩の数行は、英文学を学んだ人でしたらたぶん、ご存じの詩人T.S.エリオットの作品「荒地」からとったものです。

荒地は「4月はひどく残酷な月だ、」という超有名な一行で始まります。
ふつうでしたら4月は春の始まりであって、残酷?と首をかしげてしまいますが冬の静寂を破って命を謳歌させる春はエネルギーが高まる分、苦痛や苦悩も生まれるということでしょうか。

この部分ももちろん好きなのですが、私は特にそれに続く上述した数行が気に入っています。
Starnberger Seeはドイツのバイエルン州にある湖のようですが、言葉の響きがいいですね。
「夏が夕立を連れてやってくる」西脇順三郎訳では「急に襲ってくる」とありますが、そのあとは涼しくなるんだろうな。

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次回は7/21(金)です❤︎

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Poesy of the Week_♡ 乳母車

IMG_5781.jpg ♡ 母よ

  淡くかなしきもののふるなり
  紫陽花いろのもののふるなり
  はてしなき並樹のかげを  
  そうそうと風のふくなり
                        <乳母車 三好達治 >
(続き)
  時はたそがれ
  母よ 私の乳母車を押せ
  泣きぬれる夕陽にむかって
  轔々と私の乳母車を押せ

  赤い総のある天鵞絨の帽子を
  つめたき額にかむらせよ
  旅いそぐ鳥の列にも
  季節は空を渡るなり

  淡きかなしきもののふる
  紫陽花いろのもののふる道
  母よ 私は知ってゐる
  この道は遠く遠くはてしない道

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今年は梅雨の情緒もなく、熱帯をおもわせるような豪雨で、地方によっては、たいへんな災害でした。
だんだんこのような気象状況がふえてきているような気もして気がかりですが、いかがでしょうか。

この詩は、紫陽花をうたった詩の中でも、ちょっと悲しくなるような詩で、三好達治の名前を有名にした「測量船」という詩集のなかでも好きな詩です。

乳母車というのもなんだか懐かしい言葉ですね。
おおきな大人が年をとったおかあさんに「乳母車を押せ」とは何事かと叱る人はいないと思いますが...
母と言う存在がかなしかったころの雨の季節の素晴らしい詩であるように思います。


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次回は7/14(金)です❤︎

Poesy of the Week_♡ 薔薇と墓碑銘

♡ 薔薇よ、おお純粋なる矛盾、

それだけ多くのまぶたの下に、誰の眠りも宿さぬことの
喜びよ

Rose, oh reiner Widerspruch, Lust,
Niemandes Schlaf zu sein unter
Soviel Lidern

IMG_5035.jpg <ライナー・マリア・リルケ 墓碑銘 Reiner Maria Rilke   Das Epitaph >

ライナー・マリア・リルケ (Reiner Maria Rilke)も私の詩の遍歴にはかかすことのできない詩人です。高校生の時に読んだ『マルテの手記』の最初の一行「人々は生きるためにこの都会にあつまってにあつまってくるらしい。しかし僕はむしろ、ここではみんなが死んでゆくとしか思えないのだ。」からうけた衝撃はいまでもわすれることができません。この都会とは、リルケもすごしたことのあるパリなのですが、地方の1女子高生であったわたしにとっては、東京であり、数年後に列車で時間をかけて通学することになる都会でした。

けれども、この作品は、リルケの唯一の長編小説であって、彼の詩作の素晴らしさを予想させるものでしかありません。
たくさんの素晴らしい詩については、興味を持たれた方がいたら読んでいただきたいのですが、どれほどのものであるかは、友人のために庭の薔薇を摘んでいるときに棘に刺され、それが原因で、(敗血病で)亡くなったという彼の死にまつわるエピソードからも知ることができます。これが真実かどうかは、わかりませんが、それほど、繊細な生き方であったと人に信じさせるほどの詩人であったということでしょう。

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さて、自らの墓碑銘に刻むよう言い遺したのが、冒頭の三行詩です。

そういえば、薔薇の花びらの重なりは、人のまぶたのよう。
花びらを解いて行っても、何もありませんね。
それが喜びであるとは、どんな意味なのでしょうか。

死にたいする諦念のようなものであるのか...
謎であり、魔術的な美しさを持った言葉であるように思えます。







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Poesy of the Week_♡ 夏のそらが見える

♡ 夏のそらがみえる

夏のそらがみえる
それが詩である 本なんかにないのである
まことの詩は逃げる

            To see the Summer Sky
                                    Is Poetry, though never in a Book it lie-
                                    True Poems flee-
   < 夏のそらがみえる エミリ・ディキンソン To see the summer sky  Emily Dickinson >

IMG_5570のコピー

どうも<この世界>が、ひどく美しく、時によっては哀しいものであると気づいたのが小学校の5年生のときだったように覚えています。
哀しいことがあるから哀しいのではなくて、空の美しさが哀しいと思ったような...
それから詩という文学を知り、読んだり、自分でもそのようなものを書いたり...

この詩はアメリカの有名な女流詩人 エミリ・ディキンソンの詩集「わたしは誰でもない」にある一編。詩人であるのに詩は本の中などにないというのは矛盾するように思えますが、たぶんほとんどの
詩人が思っていることでしょう。

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次回は6/30(金)です❤︎

Poesy of the Week_♡ こころ

♡ こころ


こころをばなににたとへん
こころはあぢさゐの花
ももいろに咲く日はあれど
うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて。
               <こころ   萩原朔太郎>
IMG_5632 (1) (つづき)
こころはまた夕闇の園生のふきあげ
音なき音のあゆむひびきに
こころはひとつによりて悲しめども
かなしめどもあるかひなしや
ああこのこころをばなににたとへん。

こころは二人の旅びと
されど道づれのたえて物言ふことなければ
わがこころはいつもかくさびしきなり。

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紫陽花の花の咲く頃になると、やはり写したくなって、いろいろとでかけますが、この花,花と思われる部分が萼であるので、ちょっと写すのが難しいような気がします。
全体を撮るとなんだか、まとまりがないようで...

さてこの詩ですが、心を花で例えるならば,紫陽花という発想は、ちょっと萩原朔太郎にしては平凡かもしれません。
この花が、土質が酸性かアルカリ性かで花の色を変えることは有名ですからね。

でもこれ以上に心を例えるにふさわしい花もありませんけれど。

ですからこの季節になると、いつの間にか口ずさんでいる自分を発見して,雨の日でもなんだか楽しくなっています。

IMG_0171のコピー 
次回は6/23(金)です❤︎

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